2026年6月〜2027年5月の試験(法令基準日 2026年4月1日)に対応しています。 内容は2026年4月1日時点の所得税法(22条〜35条・69条)と租税特別措置法の条文で確かめています。

所得税は「10種類の所得」に分けて計算する

所得税では、収入をその性質で10種類に分け、種類ごとに決められた方法で「所得の金額」を計算します。

所得 どんな所得か 所得の金額の計算
利子所得(23条) 預貯金・公社債の利子など 収入金額(必要経費なし)
配当所得(24条) 株式の配当、投資信託の収益の分配など 収入金額 − 株式等を取得するための借入金の利子
不動産所得(26条) 土地・建物の貸付けによる所得 総収入金額 − 必要経費
事業所得(27条) 商売・製造・サービス業など事業による所得 総収入金額 − 必要経費
給与所得(28条) 給料・賞与など 収入金額 − 給与所得控除額
退職所得(30条) 退職金など (収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2
山林所得(32条) 山林を伐採・譲渡した所得(取得から5年超) 総収入金額 − 必要経費 − 特別控除額
譲渡所得(33条) 土地・建物・株式・ゴルフ会員権などの資産の譲渡 総収入金額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除額
一時所得(34条) 懸賞の賞金、生命保険の満期保険金など 総収入金額 − 収入を得るために支出した金額 − 特別控除額(最高50万円)
雑所得(35条) ほかの9種類のどれにも当たらない所得(公的年金など) 公的年金等:収入金額 − 公的年金等控除額/その他:総収入金額 − 必要経費

押さえておきたい計算の細部

  • 不動産の貸付けは、規模が大きくても不動産所得です(アパート経営など)。事業所得にはならない
  • 退職所得控除額(30条3項):勤続年数20年以下は 40万円 × 勤続年数(最低80万円)、20年超は 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)
    • 例:勤続30年 → 800万円 + 70万円 × 10年 = 1,500万円
    • 役員等としての勤続年数が5年以下の人の退職金(特定役員退職手当等)には、2分の1をしない
  • 譲渡所得の特別控除は最高50万円(33条4項)。ただし土地・建物・株式等の譲渡は租税特別措置法による分離課税で、この50万円の控除はない
  • 一時所得は、総所得金額に入れるときさらに2分の1にする(22条2項2号)。長期譲渡所得(総合課税の資産で所有5年超)も同じく2分の1
  • 預貯金の利子は、原則として源泉分離課税(租税特別措置法3条)で、確定申告で他の所得と合わせない

総合課税と分離課税

  • 原則は、各所得を合計して税率を掛ける総合課税(給与・事業・不動産・雑・一時・総合課税の譲渡など)
  • 退職所得・山林所得は、ほかの所得と合計しない分離課税(22条3項)
  • 土地・建物の譲渡所得、株式等の譲渡所得は租税特別措置法による分離課税

損益通算:赤字を他の所得と相殺できるのは4つだけ

所得税法69条1項は、損益通算できる損失を次の4つに限っています。

不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得(覚え方:「ふ・じ・さん・じょう(富士山上)」)

逆に、配当所得・給与所得・一時所得・雑所得などで損失が出ても、他の所得とは通算できません。 例えば、一時所得の赤字(競馬の外れ馬券など)や、雑所得の赤字は通算できません。

4つの所得でも通算できない損失(例外)

損失 通算できない理由・根拠
生活に通常必要でない資産(別荘・ゴルフ会員権・趣味の高額な美術品など)の譲渡損失 所得税法69条2項
土地・建物等の譲渡損失 分離課税のため(租税特別措置法31条・32条)。居住用財産の買換えなど一定の特例を除く
上場株式等の譲渡損失 分離課税のため(同法37条の10・37条の11)。上場株式等の配当所得(申告分離課税を選択したもの)とは通算できる
不動産所得の損失のうち、土地を取得するための借入金の利子に相当する部分 租税特別措置法41条の4
NISA口座内の売却損 損失はないものとみなされる(同法37条の14第2項)

例題

給与所得が500万円、不動産所得が100万円の赤字だった。赤字の中には、土地を取得するための借入金の利子20万円が必要経費として含まれている。

  • 損益通算できる不動産所得の損失 = 100万円 − 20万円 = 80万円
  • 通算後の所得 = 500万円 − 80万円 = 420万円

建物を取得するための借入金の利子は通算できる、という点も一緒に覚えておきましょう。

間違えやすいポイント

  • 「アパートの規模が大きければ事業所得」は誤り。貸付けは不動産所得
  • 「一時所得の赤字は給与と通算できる」は誤り。通算できるのは不・事・山・譲だけ
  • 「退職所得は他の所得と合算して課税」は誤り。分離課税
  • 一時所得の特別控除は50万円、総所得に入れるのはその2分の1

覚え方のまとめ

  • 10種類は「利・配・不・事・給・退・山・譲・一・雑
  • 損益通算は「富士山上(不・事・山・譲)
  • 例外は「ぜいたく品の損、土地建物の損、株の損、土地の借入金利子