2026年6月〜2027年5月の試験(法令基準日 2026年4月1日)に対応しています。 内容は2026年4月1日時点の国民年金法・同法施行令・厚生年金保険法の条文と、日本年金機構の案内ページで確かめています。

前提:老齢基礎年金は原則65歳から

  • 老齢基礎年金は、保険料納付済期間と保険料免除期間などを合わせた期間が10年以上ある人に、65歳から支給されます(国民年金法26条)
  • この「65歳」を早めるのが繰上げ、遅らせるのが繰下げです

繰上げと繰下げの比較

繰上げ受給 繰下げ受給
受け取り始める年齢 60歳〜65歳になるまで 66歳以後75歳まで
1か月あたりの増減 0.4%減額(昭和37年4月2日以後生まれ) 0.7%増額
最大 60か月 × 0.4% = 24%減 120か月 × 0.7% = 84%増
増減率の月数 請求月から65歳到達月の前月まで 65歳到達月から申出月の前月まで
増減は一生続くか 続く(取り消せない) 続く
老齢基礎と老齢厚生 原則として同時に繰上げる 別々に繰下げできる
  • 減額率「千分の四」と増額率「千分の七」は国民年金法施行令に書かれています。増額の月数は120か月が上限です
  • 繰上げの減額率は、昭和37年4月1日以前生まれは0.5%(最大30%)です(日本年金機構)
  • 繰下げの上限が75歳になるのは昭和27年4月2日以後生まれなどの人です。それより前に生まれた人などは70歳が上限で、最大42%です(日本年金機構)

計算例

例1 62歳0か月で繰上げ請求

  • 65歳到達月の前月までの月数 = 3年 × 12か月 = 36か月
  • 減額率 = 36 × 0.4% = 14.4%
  • 本来の年金額が80万円なら、80万円 ×(1 − 0.144)= 68万4,800円

例2 70歳0か月で繰下げの申出

  • 65歳到達月から申出月の前月までの月数 = 5年 × 12か月 = 60か月
  • 増額率 = 60 × 0.7% = 42%
  • 本来の年金額が80万円なら、80万円 × 1.42 = 113万6,000円

例3 75歳0か月で繰下げの申出

  • 120か月 × 0.7% = 84%増。80万円なら147万2,000円

繰上げの注意点(日本年金機構の案内より)

繰上げは「早く受け取れる」代わりに、次のような制約があります。

  • 請求後に取り消すことはできない
  • 老齢基礎年金と老齢厚生年金は、原則として同時に繰上げ請求する
  • 繰上げ請求をした日以後は、事後重症などによる障害基礎(厚生)年金を請求できない
  • 寡婦年金を受けられなくなる
  • 国民年金の任意加入や保険料の追納ができなくなる

繰下げの注意点

  • 加給年金額や振替加算額は増額の対象にならない。また、繰下げで待っている間は加給年金額や振替加算を受け取れない(日本年金機構)
  • 老齢厚生年金の繰下げは、受給権を取得した日から1年を経過した日より前に請求していないことが条件です(厚生年金保険法44条の3)。老齢基礎年金は「66歳に達する前に請求していない」ことが条件です(国民年金法28条1項)
  • 65歳の時点で障害基礎年金や遺族年金などの他の年金の受給権がある人は、老齢基礎年金を繰下げできません(同項ただし書)
  • 70歳を過ぎてから、繰下げの申出をせずに65歳からの本来の年金をさかのぼって請求すると、請求の5年前の日に繰下げの申出があったものとみなされ、その時点で増額された年金を一括で受け取ります(同条5項)。80歳以後の請求にはこの扱いがありません

「何歳まで生きれば得か」の考え方

税金や社会保険料を考えない単純な計算では、70歳から142%で受け取る場合と65歳から100%で受け取る場合の累計額は、

  • 1.42 ×(年齢 − 70)= 1 ×(年齢 − 65)
  • 0.42 × 年齢 = 34.4 → 年齢 ≒ 81.9歳

で並びます。試験で問われるのは損得の結論ではなく、率と月数の計算、そして繰上げ・繰下げの制約です。

覚え方のまとめ

  • 繰上げは60歳から、0.4%減、最大24%」「繰下げは66歳から75歳まで、0.7%増、最大84%
  • 繰上げは基礎・厚生いっしょ、繰下げは別々でよい
  • 繰上げは取り消せない、障害年金と寡婦年金に響く
  • 加給年金・振替加算は繰下げても増えない